売却向けコラム

自己破産してから不動産を売却したらどうなる?タイミングやメリットを解説

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自己破産をするときには、不動産の処遇を意識しないと損をしてしまうことがほとんどだと言われています。
なぜなら、売却のタイミングと方法によって得られるメリットが異なり、とくにローンの返済状況が影響を与えるからです。
そこで今回は、自己破産に伴う不動産売却のタイミング、自己破産前に不動産を売却するメリットや売却方法について解説します。

自己破産に伴う不動産売却のタイミング

自己破産に伴う不動産売却のタイミング

自己破産は、返済が困難な債務を整理するための法的手続きです。
この過程では、物件の売却が必要になる場合が多く、適切なタイミングで売るのが重要です。
自己破産前後の物件売却のタイミングと、破産管財人の役割について詳しく説明します。

おすすめは自己破産前の不動産売却

自己破産を申請する前に不動産を売却検討する方は多いです。
自己破産の手続きが始まると、財産は破産管財人によって管理されるため、その前に自分で売却を進めるのが大変重要になります。
売値が安くなる可能性が高まるからです。
自己破産後に物件を売る場合、裁判所が選任する弁護士が破産管財人として担当します。
破産管財人に指名された弁護士にとって、価格が高かろうが安かろうが報酬には影響がないため、結果として市場価格よりも低くなる可能性があります。

自己破産後の不動産売却

自己破産後に売却されるケースについて2点説明します。
1点目は、裁判所が選任した破産管財人が不動産を売るパターンです。
自己破産をする際に不動産などの貴重な資産を所有している場合、通常は管財事件として扱われます。
その管財事件は、一定以上の財産を所有している場合に破産手続きがおこなわれ、破産者は予納金を支払って手続きを進めます。
管財事件になる条件は、高額な財産を所有するだけでなく、不公平な弁済や財産の隠匿の疑いがある場合です。
管財事件では、裁判所が選んだ破産管財人が資産を調査し、売却して利益を債権者に分配し、債務の一部を返済します。
破産管財人は通常、弁護士です。
弁護士は自己破産の妥当性を調査し、資産を売ったり債権者に支払う権限が与えられます。
破産手続きが開始されると、裁判所の決定によって手続きが進行します。
破産者の所有する物件の帰属先は破産財団です。
破産管財人は、破産財団の資金を使って債権者に分配し、不動産を最高の価格で売ります。
多くの不動産は金融機関などによって抵当権が設定されているため、売った後の一部額が担保金です。
残りの利益は債権者に分配され、債務が返済されます。
すべての資産が売れ、破産手続きが完了し、裁判所から免責許可が得られると、債務は免除されます。
2点目は破産管財人が選任されず、自分で売るパターンです。
個人の自己破産の場合、所有する資産の種類によっては管財事件にならない場合もあります。
裁判所が破産財団の費用を支弁するのに不足すると判断すると、手続きが開始されると同時に手続きが終了する同時廃止事件となります。
同時廃止事件では、管財人が破産財団を作る必要がないため、手続きが比較的短いです。
個人の破産手続きでは、一般的に同時廃止事件があり、裁判所が破産者の免責を許可するかどうかを審査します。
審査では、破産の原因や現在の生活状況、将来の再建計画などが質問されます。

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自己破産前に不動産を売却するメリット

自己破産前に不動産を売却するメリット

自己破産前であれば、財産の処分は自由です。
そのため、予納金や管財人との面談せず自ら手続きを進め、不動産が売却可能です。
ただし、事前の売却が「財産隠し」に該当すると、「免責不許可事由」に該当し、借金などの負債が免除されなくなる可能性があります。
免責不許可事由には、債権者を害する目的で財産を隠匿する行為や、破産手続きの開始を遅延させる目的で不利益な条件で負債を負う行為などです。
したがって、財産隠しでないのを証明するためには、売値が適正であり、破産管財人が売却した場合と同等の金額が配当原資として用意されるので、金額が適切に証明される必要があります。

不動産売却費用を売却額に含めるのが可能

自己破産前の資金計画に大きな影響を与えます。
売るときにかかる相続や取得時の手数料、改築費用などを売値に含められるので、自己負担を軽減して不動産を売れます。

自己破産の申し立てで必要になる費用

自己破産では弁護士費用や手続き費用がかかりますが、不動産を売ってこれらの費用を捻出できます。
また、新しい住居を探すための引っ越し費用などもです。
これにより、自己破産後の生活を立て直すための資金を確保できます。

自己破産後にお金が残る

不動産を売ると、自己破産後の生活の立て直しに必要な資金が得られます。
差押禁止動産や自由財産の範囲内であれば、一定額の金銭を手元に残せます。
民事執行法第131条では「差押禁止動産」が設定されており、特定の動産が差し押さえの対象外です。
これは破産者が最低限の生活を送るために必要な財産を保護するためのものです。
差押禁止動産には、生活に必要な衣服や寝具、台所用具、1か月分の食料などが含まれます。
金銭に関しても「標準的な世帯の二月間の必要生計費」として66万円が差し押さえの対象外とされており、これは2か月分の生活費として認められています。
さらに、破産法第34条に基づき、自由財産として99万円までの金銭が差し押さえから保護されています。
この金額で新しい住居を見つけたり、生活を再建するための基本的な出費を賄えます。

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自己破産前の不動産売却はローン返済の有無が鍵

自己破産前の不動産売却はローン返済の有無が鍵

自己破産を考える前に不動産を売る際、ローンの返済状況が大きなポイントとなります。
ローンを完済している場合と、そうでない場合の対応方法について詳述します。

ローン完済の場合

ローンをすでに完済している場合、抵当権が設定されていないため、金融機関への相談は不要です。
この場合、一般的な不動産売却の手続きに従います。
まず、不動産会社と媒介契約を結び、市場価格を参考に売出価格を設定します。
販売活動が開始されると、購入希望者が現れ、内覧がおこなわれます。
その後、買主との交渉を経て契約条件がまとまり次第、売買契約が締結です。
最終的に、物件の引渡しと売買代金の受け取りが完了すれば、手続きは終了です。
ただし、売却益を債務返済や自己破産手続きに利用しなければ、免責調査で問題となる可能性があります。

ローン未完済の場合

ローンの返済が終わっていない場合は、任意売却が選択肢となります。
任意売却とは、ローン返済が滞った際に、金融機関の同意を得て物件を売る方法です。
通常、返済が滞ると不動産は抵当権者によって差し押さえられ、競売にかけられるリスクがあります。
しかし、任意売却ならば市場価格に近い価格で売れるため、金融機関も同意しやすくなります。
流れは不動産と同様で、所有者の経済状況が公にされにくいのが利点です。
また、契約日や明け渡し日を柔軟に設定できるため、引越しのスケジュールも立てやすく、場合によっては引っ越し費用を売却代金から負担できます。

任意売却の注意点

任意売却には以下の注意点があります。
必ず金融機関の同意が必要な点です。
金融機関が合意しない限り、任意売却は成立しません。
自己破産の免責調査で問題とならないよう、適正な価格で売り、不正な財産隠しをおこなわないように注意が必要です。
価格を証明するために、物件鑑定や査定書を用意しましょう。
3つ目は詐欺破産罪の回避です。
詐欺破産罪とは、債権者を不当に害する目的で財産を隠匿したりする行為を指します。

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まとめ

不動産の売却については、破産申し立て前後で手続きが異なります。
破産申し立て後に不動産を売ると、破産管財人や抵当権者が競売にかける可能性があるため、自由に売りづらいです。
一方、申立前であれば不動産を自由に売るのが可能ですが、財産を隠していると疑われないよう慎重に進める必要があります。


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