相続の遺留分侵害額請求とは?遺留分減殺請求権との違いや請求方法を解説
相続の手続きをおこなう際は、遺留分侵害額請求について理解しておくことが大切です。
本記事では、遺留分侵害額請求とはなにか、遺留分侵害額請求と遺留分減殺請求権の違いや遺留分侵害額請求の方法について解説します。
不動産を相続予定の方は、ぜひ参考になさってください。
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相続における遺留分侵害額請求とは?
遺留分侵害額請求とは、法定相続人が本来受け取るべき最低限の遺産が十分に受け取れなかった場合に、その差額を遺留分として取り戻すための請求のことです。
遺留分侵害額請求は、遺産の分配が不公平であった場合や生前贈与によって遺産が減少した場合などにおこなうことができます。
遺留分とは?
遺留分は、法律で定められた相続人が受け取るべき最低限の遺産の割合のことです。
遺留分により、相続人が遺産を一切受け取れないような不公平な状況を防ぐことができます。
法定相続人のパターン別の遺留分割合は、以下のとおりです。
●相続人が配偶者のみ:配偶者に2分の1
●相続人が子のみ:子に2分の1
●相続人が配偶者と子:配偶者に4分の1、子に4分の1
●相続人が親のみ:親に3分の1
●相続人が配偶者と親:配偶者に3分の1、親に6分の1
そのほか、相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合は、配偶者に2分の1の遺留分があります。
遺留分侵害額請求ができる方とは
遺留分侵害額請求はどの相続人でもできるわけではありません。
遺留分侵害額請求ができる法定相続人は、以下のとおりです。
●配偶者
●子、孫、ひ孫
●親、祖父母、曾祖父母
兄弟姉妹や甥姪は、法定相続人としての遺留分が認められていないため、遺留分侵害額請求はできません。
遺留分侵害が起こるケースとは
遺留分侵害額が起こるケースは、主に3パターンあります。
1つ目のケースは、遺言書により、特定の相続人や第三者に多額の遺産が遺贈された場合です。
その場合、特定の相続人や多額の遺産を遺贈した方に遺留分侵害額請求をすることになります。
2つ目のケースは、生前贈与により、生前に特定の相続人や第三者に多額の贈与がおこなわれた場合です。
遺留分を侵害された相続人は、生前贈与を受けた方に遺留分侵害額請求をおこないます。
3つ目のケースは、死因贈与により、死亡を条件として特定の相続人や第三者に多額の贈与がおこなわれた場合です。
この場合も、贈与を受け取った方に遺留分侵害額請求をおこないます。
遺留分侵害額の計算方法
前述のとおり、相続人の関係によって遺留分の割合は異なるため、まずは遺留分の割合を確認しましょう。
次に、計算の基準となる財産額を確認します。
計算式は、以下のとおりです。
基準となる財産額=「相続財産」+「一定の範囲の贈与財産」-「債務額」
そして、基準の財産額に遺留分の割合を掛けると、遺留分侵害額を計算できます。
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相続における「遺留分侵害額請求」と「遺留分減殺請求権」の違い
2019年7月1日の改正民法により、遺留分に関する請求の方法や内容が大きく変わりました。
遺留分減殺請求とは、改正前の呼称になります。
相続の際には、「遺留分侵害額請求」と「遺留分減殺請求権」の違いをしっかりと理解し、適切な手続きをおこなうことが大切です。
主な改正点や違いは、以下のとおりです。
請求内容の違い
従来の遺留分減殺請求権では、目的物や権利の返還を求める形での請求が中心でした。
たとえば、遺贈や贈与によって遺留分が侵害された場合、その物や権利を返還してもらうことによって遺留分を確保しました。
一方、改正後の遺留分侵害額請求権では、遺留分の不足分を金銭で請求する形に変わっています。
物や権利の返還ではなく、金銭の支払いを求めることが基本となりました。
支払いの猶予制度の導入
改正により、新たに遺留分侵害額の支払いについての猶予制度が導入されました。
支払いの猶予制度は、遺贈を受けた側が請求された金額をすぐに支払えない場合に、裁判所に支払いの猶予を求めることができる制度です。
生前贈与の取り扱いの違い
改正後は、遺留分の計算において、どの贈与をどれだけ考慮に入れるかが変わりました。
相続人に対して婚姻・養子縁組・生計の資本としてなされた贈与は「特別受益に当たる贈与」となり、相続開始前の10年間分をさかのぼって相続財産に含めることができます。
当事者双方が遺留分権利者に対して損害を加えることを知ってなされた「悪意のある贈与」については、期間制限なしで相続財産に含めることが可能です。
そのほかの一般的な贈与に関しては、相続開始前の1年前までを相続財産に含めて計算します。
遺留分侵害額請求の期限
遺留分侵害額請求には、消滅時効と除斥期間の期限が設けられています。
消滅時効は、相続と遺留分侵害を知った日から1年以内です。
相続があることを知らなくても、相続発生から10年の除斥期間を経過すると、遺留分侵害額請求権は自動的に消滅します。
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相続における遺留分侵害額請求の方法とは?
遺留分侵害額請求の手続きは、主に4ステップあります。
それぞれのステップには、特有の注意点や方法があり、適切に手続きを進めることが大切です。
遺留分侵害額請求の手続き方法は、以下のとおりです。
ステップ①相続人間で話し合いをおこなう
遺留分を侵害されたときは、遺留分侵害額請求をおこなう前に、まずは相続人同士で円満な解決を目指しましょう。
直接会って話し合う方法がおすすめですが、感情的にならず冷静に話すことが大切です。
心配な場合は、弁護士に相談し、中立的な立場からの意見やアドバイスを受けると良いでしょう。
また、話し合いの内容は書面や録音で記録しておくと、後のトラブルを防ぐことができます。
ステップ②内容証明郵便を送る
話し合いがまとまらない場合、訴訟提起や調停の申立てをすることが考えられます。
遺留分侵害請求は「家庭に関する事件」となり、訴訟を提起する前に、まずは家庭裁判所に家事調停(遺留分侵害額の請求調停)を申し立てることも可能です。
遺留分侵害額請求権の消滅時効が迫っている場合は、話し合いの途中でも、相続の開始および遺留分を侵害する贈与・遺贈があったことを知ったときから1年以内に、いったん内容証明郵便を送付しましょう。
内容証明郵便を送付して遺留分侵害額請求の意思表示をすれば、消滅時効は意思表示をしたときから5年間になります。
ステップ③家庭裁判所の調停
相手方との交渉がまとまらない場合、家庭裁判所に遺留分侵害額の請求調停を申し立てる方法もあります。
調停では、裁判所の調停委員が双方の意見を聞き、中立的な立場から交渉を仲介する流れです。
ただし、調停はあくまでも双方の合意を模索するものであり、強制的に決まるわけではありません。
双方が調停案に合意すれば、調停成立となります。
ステップ④訴訟を起こす
調停や話し合いでの解決が難しい場合は、訴訟を提起する方法しかありません。
遺留分侵害額請求訴訟を裁判所に提起し、請求権の存在や請求額を争います。
訴訟を提起した場合は、遺留分侵害の事実や請求額の妥当性を証明する必要があります。
裁判所は双方の意見や証拠を元に判決を下す流れです。
訴訟で勝訴すれば、遺留分を受け取れます。
支払い命令を受けても相手方が支払わなかった場合は、勝訴判決に基づいて財産を差し押さえることも可能です。
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まとめ
遺留分侵害額請求とは、相続人が本来受け取るべき最低限の遺産が十分に受け取れなかった場合に、その差額を遺留分として取り戻す請求のことです。
改正前の遺留分減殺請求との違いは、請求内容や生前贈与の取り扱いなどが挙げられます。
遺留分侵害額請求の手続き方法は4ステップありますが、まずは話し合いから始めることが大切です。
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