土地の「擁壁工事」はどんなときに必要?種類や費用相場を解説

「この土地には擁壁工時が必要です」
マイホームの土地を探していると「擁壁」の設置工事をおこなわなければならない土地に出会うことがあります。
擁壁工事とは、どのような場合におこなう必要があるのでしょうか?
今回は土地の擁壁工事について、その概要や工事の種類、費用の相場をご紹介いたします。
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擁壁工事とは、がけや高台などの斜面をコンクリートなどで覆い、斜面の崩落を防ぐ工事のことです。
傾斜地などの高低差がある土地の場合、その上に建てる建物の重さや、土の中に溜まった雨水の水圧、地震や台風などの災害など、さまざまな要因によって斜面が崩れやすくなります。
土砂崩れが起きると、その土地や建物が崩壊する危険があるだけでなく、周辺環境やひとの命に危険が及ぶことも考えられます。
そこで斜面の土が崩れないように留める「土留め」として、擁壁を壁状に設置するのです。
このように擁壁工事をおこなうことで、土砂崩れを防ぎ、周囲にとっても自分たちにとっても安全な環境をつくることができます。
擁壁工事が必要なケース
では具体的にどのようなケースで、擁壁工時が必要になるのでしょうか?
多くの市町村では「がけ条例」が定められています。
この条例では、高さ2m以上のがけに建物が近接する場合は、がけの高さの2倍以上の距離をがけから空けて、建物を建築しなければならないとされています。
この場合、敷地の端から4m以上も空ける必要があるため、思ったより小さい家しか建てられないことや、狭い土地だとそもそも建築自体が難しいことがあるのです。
しかし擁壁でがけを覆うことで、がけからの距離を空けて建築する必要がなくなります。
つまり擁壁工事は、高さ2m以上の高低差がある土地で、がけ条例の制限を受けずに住宅を建築する場合に必要になるのです。
擁壁工事の申請
がけ条例が適用されるがけの高さは2m以上なので、当然設置する擁壁の高さも2m以上になります。
2m以上の擁壁を建築する際には、各自治体への申請が必須です。
申請から許可までは1か月程度かかりますが、擁壁工時の許可が下りないと建物の建築申請もおこなえません。
そのため擁壁工事が必要な土地に家を建てる場合は、擁壁工事がない場合よりも家の着工までに時間がかかってしまいます。
細かい規定や申請方法は自治体によって異なるので、高低差が2mを超えそうな場合は、事前に各自治体に確認しておきましょう。
2m以下の擁壁も
がけ条例の規制を受けない場合でも、擁壁工事自体はできます。
なかには状況に応じて、自治体への申請が必要ない2m以下の擁壁を設置することもあります。
念のために斜面を安定させたい場合や、道路から少し高い位置に土地を造成したい場合に有効です。
しかし申請が必要ない2m以下の擁壁でも、安全性は重要です。
事前に建築会社としっかり相談して、安全な構造の擁壁を建築するようにしましょう。
土地の擁壁工事にはどんな種類がある?
擁壁工事にもいくつかの種類があり、それぞれ特徴やデメリットが異なります。
①鉄筋コンクリート擁壁
現在、もっとも一般的な擁壁の種類が鉄筋コンクリートの擁壁です。
構造計算がしやすく、がけに対して真っすぐに擁壁を立てられるため、敷地を有効的に使えます。
また鉄筋コンクリート擁壁にもいくつかの施工方法があり、主に以下の3種類があります。
●L型
●逆L型
●逆T型
いずれも地中に埋まる部分が水平に出っ張っており、擁壁が倒れるのを防いでくれます。
違いはその出っ張りの部分で、「L型」はがけの高いほうに、「逆L型」はがけの低いほうに出っ張りがあります。
また「逆T字型」は両側に出っ張りがあり、より安定性が期待できますが、地中部分が隣地にはみ出してしまう場合が多いです。
そのため敷地条件に応じて、3つの種類から適した方法を選んで施工します。
製造方法の違い
さらにコンクリート擁壁は、現場でコンクリートを打つ「現場打ち擁壁」と、工場で生産される「プレキャスト擁壁」に大きく分けられます。
プレキャスト擁壁は工場で生産するため、品質に優れており、短期間での施工が可能です。
一方、現場打ち擁壁は品質に差が出やすく、工期も長くなりやすいものの、大型重機を使わずに施工できるため、プレキャストよりも費用が安い傾向にあります。
②ブロック擁壁
擁壁にはブロックでつくるものもあり、ブロック擁壁と呼ばれています。
ブロック擁壁は高低差が大きいがけなどで利用されることが多く、高台の住宅地などで見かけることも多いです。
ブロックの素材にはコンクリートや「間知(けんち)石」と呼ばれる石材が用いられます。
ブロック擁壁の施工方法は、以下の3つです。
●矢羽積み
●布積み
●練積み
多く使われているのは、ブロックを矢の形のように斜めに積む「矢羽積み」です。
同様に、ブロックを水平に積む「布積み」も多く用いられています。
また間知ブロックの場合は、積んだブロックの間をセメントやモルタルで固める「練積み」という方法で施工されます。
③石積み擁壁
石積みとはその名のとおり、自然石をそのまま積み上げた擁壁のことです。
鉄筋コンクリート擁壁やブロック擁壁と比べれば強度はやや劣りますが、それでも安定感があります。
また水が抜けやすいため、水圧による崩壊も起きにくいです。
石積み擁壁の施工方法には、以下の2種類が挙げられます。
●練積み
●空積み
「練積み」は先述のブロック擁壁の施工方法と同じで、石と石の間をセメントやモルタルで固めて強度を増やす施工方法です。
大きな擁壁の場合は、擁壁の下にコンクリートの基礎を打ち込んでいる場合もあります。
もうひとつの「空積み」は石をセメントやコンクリートで固めず、砂利や栗石などの小石を間に敷き詰めて積み上げる方法です。
しかし耐久性が低く、あまり強固とはいえないため、2mを超えるような擁壁工事に用いられることはほとんどないでしょう。
土地の擁壁工事にかかる費用はいくら?
最後に、擁壁工事にはどの程度の費用がかかるのか、確認していきましょう。
一般的な鉄筋コンクリート擁壁の場合、「1㎡あたり3~10万円」が単価相場です。
業者のなかには1㎡あたりの定額費用や目安費用を設けている業者もあります。
しかし擁壁工事の費用は擁壁の種類や大きさだけでなく、地域や立地によっても大きく変わります。
なぜなら地域によって残土処分場までの距離や道路状況が、立地や地盤によって必要な工法や重機、地盤調査の内容が違ってくるからです。
そのため擁壁工事の費用は、基本的に工事業者に見積もりをとって確認する必要があります。
擁壁工事費用の計算
たとえば高さ2m・幅10mの擁壁を1㎡あたり5万円の単価相場でつくる場合、擁壁工事自体の費用は以下のようになります。
(2m×10m)×50,000円=1,000,000円
このように擁壁工事は100万円を超えることも珍しくなく、少なくとも数十万円の費用がかかります。
また先述したとおり、必要な費用は擁壁工事費だけでなく、基礎工事や掘削工事の費用、重機の運搬費や職人さんの人件費なども必要です。
工事の難易度が高い場合や、現場の道が狭く土砂の運搬に手間がかかる場合、工事に伴う通行整理の人件費が必要な場合などは、費用が高くなりやすいでしょう。
擁壁工事の助成金
自治体によっては、擁壁工事に補助金を提供しているところも多いです。
受給条件や補助金額は自治体によって異なるため、事前に確認しておきましょう。
たとえば東京都の場合、擁壁工事にかかる費用の最大2分の1が補助金として支給されます。
ただし支給には条件があり、がけの高さが2m以上あること、がけの上に2軒以上の家屋が建っていることが条件です。
また公共施設などに近く、施設に被害を及ぼす恐れがある場合も支給対象となります。
補助金を受け取るには、各自治体へ補助金の交付申請書を提出する必要があります。
交付申請書は自治体のホームページなどから手に入れられるので、交付条件とともに事前に確認しておきましょう。
まとめ
擁壁工事は、主に2m以上のがけに近接する土地において、安全な住環境をつくるために必要な工事です。
擁壁には鉄筋コンクリート・ブロック・石積みなどの種類があり、それぞれメリットやデメリットが異なります。
工事単価はおおよそ1㎡あたり3~10万円が相場ですが、地域や立地によっても費用が変わってくるため、事前に見積もりをとることが重要です。
自治体によっては擁壁工事に使える補助金もあるので、ぜひ検討してみてください。
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